| 祭りも近づき、あちらこちらからだんじり囃が聞こえてまいります。夕暮れのひと時、耳を澄ませて聞き入っていると何とも心地良い気分になり祭りの色々なことに思いをめぐらせます。たとえば、だんじりを造る技術は世界に冠たる日本建築技術の素晴らしさを感じますし、飾り物を見ましても古えの昔から伝わる日本の織物や刺繍、染物の素晴らしさ、和太鼓や鉦、笛などの楽器の素晴らしさなど、そこには長い伝統に培われてきた日本の伝統産業の魅力があります。
祭りとはこれらの技術や文化を伝えていく大切な日本の心なのかもしれません。しかし、その技術を継承する人が減少し、国内だけにこれを求めるとまことに高価なものになります。そこで、国外にこれを求めて値段を下げているのでありますが、値段が下がると同時に技術力も衰退し技術を継承する人の生活は益々厳しくなり減少していくということになるのです。この先、日本の伝統文化や技術は国外なしには成り立たないのではと危惧しております。もちろん、すべてを否定するわけではないのです。日本人の心を忘れたくない。先人が残してくれた大切な日本の美しい文化や技を守り伝えていかなければならないと思います。これら物を造りだす地味な仕事に我々の世代や若い次世代がもっと目を向け、理解し、守っていきたいのです。祭りをすることは、たかが祭りでありますが、地元の文化、ひいては日本の伝統文化を守り伝えていくことにもなるのです。祭りで法外に儲けることはほどほどにしていただいて、われわれも伝統産業や文化を守るべくもっと見る目を肥やして温かく見守っていきたいものですな。日本の伝統産業や文化の心は日本人が守らなくてはならないのです。
このほかにも祭りにとけこんだものがありますよ。たとえば、金綱や曳き綱、前梃子を差し込むつつみ綱、後梃子のどんすなどの綱の結び方など、綱を結ぶ技術は世界でも日本は有数です。これらの結び方も一般の方が容易くこなしてしまう。そして、これを伝えていく。これが大切なんですな。限られた人だけが楽しむ祭りではなく、皆でワイワイがやがや話しながらこれらの作業をして楽しむ。これが大切なことですな。祭りは本番と準備段階で二度楽しむ訳です。
いろいろと思いをめぐらしていましたが、先程から聞こえる太鼓のリズムが少々おかしいですぞ。ときどき小太鼓のリズムが違う時があるのです。そう感じているのは小生だけでありましょうか。小太鼓はトン・コ・トンと二打と三打目の間を短くたたくのが本来であるのに、トン・トン・トンと三拍子にたたいている。まことに違和感があって聞き苦しい。それはまたゆっくりたたく時に顕著に表れていますな。かつては、大太鼓のたたき方や笛の吹き方など各町に特徴があり、すぐどこの町であるかは察しがついたのでありますが、今はそれが薄れてきているようです。各町の先輩方、ここらで一つ後輩方を指導することも必要じゃないですかな。岸和田だんじり囃のリズムが変わらぬうちにお願いいたします。
それと掛け声のアクセントもお願いします。ソーリャは同音です。今、聞こえるのは、第一音が高くなっています。岸和田のアクセントで祭りをしたいですな。
祭りも様変わりしてきているように感じます。岸和田祭は時代とともに変化して歩んできた。それゆえ皆んなに支持され今も人気があるのですが。しかし、昭和30年代後半から40年代前半にかけてはまことに衰退期でありました。それが、昭和47年NHKテレビの全国ネット番組「ふるさとの歌まつり」の放映から岸和田だんじり祭が一躍有名になり、以降、メデイアに取り上げられるようになって、徐々に祭りが様変わりして、参加者より見物人が楽しむ祭り、いわゆる観客を意識するようになったのではないかと思うんです。そして昭和60年頃からのビデオの普及が、より一層これに拍車をかけたのではないでしょうか。
その一つに、やりまわしの速さの競争が上げられます。この競争がエスカレートするのに伴い人身事故やだんじりの激突、横転事故が数多く起こってきたのではないでしょうか。だんじりは力の加減や操作を間違うと必ず横転します。横転しないだんじりはないのです。横転しないようにぎりぎりの線でやりまわしをするのが上手なやりまわしであります。かつて、だんじりがあたったりこけたときには上の方々から
「めんどい(みっともない)!」
という声がかかった。これは、あてたりこかしたりするということは我町のだんじりの操作の加減を知らない下手くそであるということなのである。
今、人気のあるだんじりの事故特集のビデオはよく売れるそうですが、刺激を求めて見ている人もあるし、今度このような失敗をせんようにというために見る方もおられる。しかし、大きな事故やリスクをともなっていることが判らない年代もこれを見ているわけで、ビデオの中の事故などの迫力が勢いがあってかっこいいと感じ、あたることや横転することが当たり前となって感覚が麻痺するという短所があることも考えなければならないと思うのです。映像にコントロールされて我々自身が苦痛に思う祭りにならないように、事故のない楽しい祭りができますようにと祈っております。
いろいろとべっこなことを申し上げましたが、今年も暑い祭りとなりそうな気配ですので、熱中症などには十分配慮して皆さんどうか今年も事故や怪我のない楽しい祭りを。
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