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presented by 岸和田だんじり祭振興会 

 

 

■ きしわだ創作落語 ■
〜其の弐〜

『べからずの書状』

 岸和田祭は自主運営・自主警備が基本でございます。もちろん、警察やお役所もそれぞれの立場で協力してくれてます。だんじりは道路の上を走りますから、警察の許可が必要です。 曳行コースに車が入ってこれんようするのも警察の協力がないとでけません。 若連の人が一生懸命になって、見物人を誘導してくれてますけど、50万人とも60万人ともいわれる見物人はとても若連の人達だけで規制できるもんやおまへん。これも警察の協力が必要です。
  お役所はいうたら、だんじりが走る道路の整備です。 デコボコのないようにしてくれてます。仮設トイレの設置と、 ゴミの掃除。 これもお役所の仕事です。 ただトイレとゴミはもっと本気になってやって貰わんと困ります。 曳行コースの中には学校・公民館、他にも役所の公共施設が一杯ありますやろ? なんで祭りになったら入れんようにするんでっか。
  ゴミもそうです。 祭りのゴミもなんとかして貰わなアカン。 だんじりは休憩の時、ジュース飲んだり食べたりもします。それでも終ったら後片付けしてから出発します。 見物人のゴミまで関係者ではでけしまへん。 ゴミ箱はあってもゴミで溢れて回りもゴミの山です。 焼却場へ持って行ってくれたらえーんやけど、土曜・日曜は焼却場近隣との話し合いで規制されてて、持って行かれへん。 何か言うと 「予算がない、予算がない」 役所みてたら“予算がない”ちゅうのは考えられへん。仰山の人に払うてる給料は誰が払うてんのか知ってまっか? 私らの税金でっせ。 訳の判らん無駄遣いされててみんな黙って税金払てますわ。 この国の人間はちょっと可笑しいですな。 そやけど皆で行動したら何とかなりまっせ。 岸和田だけでも何とかしまへんか。 こんなこと喋ってたら二時間あっても三時間あっても終らへん。 このへんで止めときます。

 その昔、ちょん髷の時代はといいますと自主運営・自主警備は今とそんなに変わりません。 ただ切り捨て御免の時代でございます。 刀差してる人はお金がなかっても力はもってます。 お上のいうことは何があっても守らんとアカン。そんな時代のお噺でございます。

 

清吉… 「お〜い、いま帰ったで」
さき(清吉の家内)… 「あんた、遅かったやないかいな。 さっき庄屋さんとっから使いの人が来て、あんた帰って来たら すぐ来るようにて言うてはったで。 またなんぞ悪い事でもしたのとちがいますのんか?」
清吉… 「こら!亭主が仕事から帰ってくるなりなんやそれは。 俺が何をしたちゅうんや。 そらわしも人間や、夜鳴きで釣銭ごまかしたこともある。 床屋で寝てる奴の眉毛そった事もある。 将棋してて、相手がよそ見してる内に、ひょこ一つ向きを変えたこともある。 酒屋で熱燗一杯言うて半分飲んでから、こんなん熱うて飲まれへん、薄めてくれ。 薄めてもろたら、ぬるて飲まれへん。 また燗してもうてから熱い。 ぬるて飲まれへん。 …熱い。 …ぬるい。 …熱い 言うて、あの時は熱燗一杯の金で酔うた、酔うた」
さき… 「あんたようそんなしょうもないことやってまんな。 そんな事してるよって後梃子のドンス持たしてくれまへんのや」
清吉… 「なにをいうてんや! ドンス持たんと後ろ走るのも大事な仕事やねんぞ。キャッチマンもせなならんし、こけてドンス離したらすぐ交代もせんといかんのや。 お前に岸和田の男の気持ちがわかってたまるか!」
さき… 「わざわざ庄屋さんが使いをよこすぐらいや、なんぞ大事な用事がありますのやろ。 しょうも無いこと言うてんと、早よ行きなはれ」
清吉…

「言われいでも解ってるわい!
・・・・・・ ほんまにうるさいカカや。わしかて、後梃子のドンス持ちたいわ。 そやけど去年、直線でこけたしな。 おととしは、ドンス持ったまま寝てしもたし。 屋根ばっかり見てて、鳩のフンが口の中に入ったこともあったな。 あんまり美味しいもんちゃうな、あれは。 しかし何の用やろな。 さっきはカカにあないな事言うたけど、考えたら俺も人に言えん事もしてるしな。 あんまり行きたないな。 そやけど行かな怒られるやろしな。困ったなあ。 あ〜、着いてしもたがな。 まあ、ええわ。 先に謝ってしまお」

清吉… 「こんにちは、庄屋さん。 えらいすんまへん」
庄屋… 「はいはい、お〜誰か思うたら、清吉さんやないかいな。 あんた入って来るなり何を謝ってなはんのや」
清吉… 「庄屋さんとこのお孫さんやと知らんかったもんやさかい、あんまりやかましゅう泣くよって、お尻にヤイトすえてしまいましてん。 えらいすんまへん」
庄屋… 「あれは、あんたやったんかいな。 それは何をすんねんな」
清吉… 「え!知らんかったんでっか。 ほたらこの間、牛がしんどそうにしてたんで針をうってあげたんやけど、 あの牛どないかなりましたか?」
庄屋… 「牛もあんたかいな。 よーそんなえー加減なことばっかりしてなはんな。 あんたもえー年してんのやから、そんなことしてたらあかんがな。 折角ようでけた嫁さん貰たんや。 もっと仕事に一生懸命頑張んなはれ。  今日来てもろたんは、そんな事とは違うのや。 ほんまは年番さんに来て欲しかったんやが、年番の留吉さんは仕事で日根野まで行って二、三日帰れんらしい。 他に誰ぞと思うたんやが変に大層になっても困る。 そこで思いついたんが清吉さん、あんたや。 あんたはお酒は飲むけど、ちょっと阿呆で、オッチョコチョイやし、顔もけっして男前やないから村の中では人気者や。 それであんたに来てもろうたと、 そういう訳や。今日は大事な話ですよって、玄関で立ち話も具合が悪い。 まあ上へ上がっとくなはれ」
清吉… 「褒められたような気しまへんけど、そうでっか。 なんや、怒られるのとちゃいまんのか。 ほな遠慮のう上がらせてもらいま」
庄屋… 「ちょっと待ちなはれ。 草履を脱ぎなはれ、草履を。 そのまま上がる人がありますかいな。 ・・・ なんでまた脱いだ草履を持って上で履きますのや。 ・・・えっ、なに?足がよごれる? 綺麗に掃除してますやろ。 草履はそこへ置いときなはれ。 ・・・取られる? 怒るでしまいに。 それに草履や思うてたら、片一方下駄の歯が付いてますやないか。ようそんなんで歩けますな。 ・・・なに、歩きにくい? 当り前や。 そんなん誰が持って行きますかいな。 ・・・なに、取られた事がない? 自慢しなはんな。 早よそこへ座んなはれ。 ・・・お茶がない? 今座ったとこやないかいな。 婆さんや、お茶を入れたげて。 今日は大事なお客さんや。 おいしいのを入れたげてください」
清吉… 「婆さんや、饅頭も持ってきてあげて」
庄屋… 「そら何を言うねんな。 あんたが言うこっちゃない。 まァよろしい、 今朝仏壇にそなえたのがありましたやろ。 そーそー、それを出してあげて。 うちの村にはこんなんしか他におらんのかいな。 あんたは喧嘩をせえへんから、それが取り柄や。 ま、しょうがない」
清吉… 「そーそー、しょうがない」
庄屋… 「ちょっと黙って聞きなはれ」
清吉… 「黙ってたら、落語にならん」
庄屋… 「ほんに楽しいお人じゃ。 そんな調子やから村の人にも好かれるんやろう。 今日は忙しいのに呼びだてしてすまなんだな。 実は他でもないんやが、そろそろ祭りも近づいてきたしな。 どうですかな今年は? 町の衆も村の衆もだんじりを曳きたがってるかいな? それをあんたに聞きたかったんや。 去年は喧嘩もあったもんでな。 “来年こんなことしたら、もう曳かさへん” 言うてお代官様にえろうしかられてますんでな」
清吉… 「そら庄屋さん、もうえらいこってっせ。 去年の喧嘩のしこりがまだ残ってるみたいですわ。町(まち)の連中が “今年の祭りで仕返しする” 言うて、人集めてるみたいでっせ」
庄屋… 「まだ、そんな事いうてますんか。 若い衆がたくさん集まる祭りのことや。 お酒もはいるし、少しは喧嘩もありますやろ。 するなとはいいません。 わしも若い時は色々あったもんや。 それにしても祭りの喧嘩は、祭りで終らさなアカンがな。 祭りが終ったら皆、仲良うせなあきまへん。 祭りを楽しみにしてる子供さんも仰山いてるちゅうことも忘れたらあきまへん。 だんじり好きなんは結構やけど、祭りも大事にしてもらわんとな」
清吉… 「庄屋さんの気持ちはようわかってま。 わしら庄屋さんにお金出してもらわれなんだら、祭りでけしまへん。 “今年もだんじり出る”言うて、みんな楽しみにしてまっさかいに、なんとか頼んますわ」
庄屋… 「いやいや、こんなこと言うてますけど、わしもだんじりは大好きや。 だんじりもたまには表へ出たいやろう。 よっしゃ、それやったら今年もなんとかしましょ」
清吉… 「おおきに、有難うございます。これで今年も酒が飲める」
庄屋…

「さ、そこや。清吉さん。 酒はなんぼ飲んでも構やせんのやが、去年祭りで喧嘩があったやろ。 それでお殿さんからお達しがあったんや。 えーと、どこえやったかいな。 ・・・ 婆さんや。 お代官様から貰うてきた祭りの書状がありましたやろ。 ・・・ おー、そうじゃ。 あれを持ってきてくれますか。 大事なものやから奥にしまっておいたんじゃ。 ・・・ おー、これやこれや。 ちょっとこれ、読んで見てんか」

清吉… 「へぇ、これでっか。 ・・・ わー、なんやぎょうさん書いてますな。 えー なになに。
・・・なるほど。 ・・・ うわーっ。こら、えらいこっちゃがな」
庄屋…

「そやろ。 大事なことやからあんたにも見といて貰おうと思うて出したんじゃ」


噺は創作ですけどこの書状は実際に発行されたもんで、 古文書にも残ってるそうでございます。

 

清吉… 「そらそうと、庄屋さん。 これなんて書いてまんねん」
庄屋…

「なんや、解ってへんのかいな。 なにが “なるほど” や。 貸しなはれ。 私が読んであげるからよう聞いときなはれや。
一、 曳き違いの時に喧嘩をするべからず。
一、 他所者や無籍者をだんじりに誘うべからず。
一、 祭りの日と前日は、他から喧嘩を仕掛けてきても相手にするべ からず。
    もしも喧嘩をしたら失費を全部負担させる。
一、 他所の人が町内に蔵や家を持っていても、その人のところへ寄附を取りに
   行くべからず。
一、 綿のほかの着物を着るべからず。 絹に似た木綿でもいけない。
(文化五年八月)

と、こういう事や。 どや、わかったかいな」

清吉… 「なるほど。 できまっかな、そんな難しいこと」
庄屋… 「お殿さんからのお達しや。 どんなことがあっても守ってもらわなどもならん。 村だけやない、町も浜もだんじり曳かれへん」
清吉… 「へェー、それはわかってまっけど、ベカラスちゅうのはなんでっか。 新しいインフルエンザでもはやってますのか?」
庄屋… 「鳥インフルエンザやあれへんがな。 そんなのとは違う」
清吉… 「わかってま。 もう何も言わんでもわかってます。」
庄屋… 「あんたほんまにわかってますのか。 なんか知らんけど妙に胸騒ぎするんやが大丈夫かいな?」
清吉…

「まかしときなはれ。 そうでっか、しかしお殿さんも変わったお方でんな。
喧嘩をしたらベッタラ漬けを食え! 寄附を貰たらベッタラ漬けを食え! 絹の着物をきたらベッタラ漬けを食え! しかしなんでんな。 よう考えたらみんなできんことおまへんな。 そやけど困ったな、わしは絹の着物はもってない。 庄屋さん、持ってなかったら食わんでもよろしやろ?」

庄屋… 「 ・・・・ 」
清吉…

「 ねぇ・・・・庄屋さん?」

庄屋…

「あんたな、わし今なに考えてるか解るか? おまはんに嫁さん世話したこと後悔してまんのや。 わしもあんたのこと アホやアホや と思うてたけど、底なしのアホやな。それもジャジャ洩れや。 ようそんなんで生きていけるな。 嫁さんも怒らんと辛抱してるわ」

清吉… 「そんなことおまへんで。 今日もここへ来る前にボロクソにぬかしよりまんねん」
庄屋… 「当り前じゃ! もっと怒って貰いなはれ。 お饅頭も綺麗に食べてからに。 見てみなはれ、洗うたみたいに綺麗がな。 皿まで舐めなはんな。 家でもこんなことしてますのんか?」
清吉… 「へぇ、見た目より綺麗好きでっしゃろ。 あと洗わんで済む」
庄屋… 「洗います、洗います! 念入りに洗わせて貰います。 どこが綺麗好きですねん。 きったない。 あと使われへんがな。 この皿見る度にあんたの顔が浮かびますわ。 婆さん、この皿は特に念入りに洗うてください」
清吉… 「庄屋さんも綺麗好きでんな」
庄屋… 「どつくでしまいに。 これもあんたを呼んだわしが悪かったんや。 一つ一つ教えてあげますでな。 よう聞いときなはれや。 まず最初は曳き違いの時に喧嘩をするべからず。これはだんじりの”すれ違い”の時に喧嘩をしたらいかんということや」
清吉… 「そやけど、あてられたらしゃあない」
庄屋…

「あたるような、狭いとこで曳き違いせえへんかったらええことや。 二つ目は他所者や無籍者をだんじりに誘うべからず。 だんじりは村の人だけで曳きなはれいうことや」

清吉…

「それは解るんやけど、この頃町も村も少子化で段々と曳く人間が少のなって来てるしなあ」

庄屋… 「お前さんは、訳のわからんとこで頭働くんやな。 今は江戸時代や。 そんな事何百年か後の人が考えてる。 お前が心配するこっちゃない! それに自分の村のだんじりが当ったらどうする?」
清吉… 「そら情けないですわ。 だんじりが可哀想や」
庄屋… 「それが大事なんや! だんじりに怪我させたらアカンと思うてドンス持つやろ? そやけどだんじりを見た事もない、格好だけの人間はどうやろ。 そんな事考えんと引張るやろ。 だんじりを怪我させたらアカン。 この気持ちで曳きなはれということや。 三つ目が祭りの日と前日は他から喧嘩を仕掛けてきても相手にするべからず。もしも喧嘩をしたら失費を全部負担させる。これは解りますやろ。 四つ目は他所の人が町内に蔵や家を持っていてもその人のところへ寄附を取りにいくべからず。 去年は同じ村だけやない。 町や浜にも寄附を貰いに行ったもんがおるらしい。 お代官様へも噂が流れたようや。 必要なお金はわしが出してますやろ。 派手な飲み食いせなんだら十分にたりるはずです。 最後の五つ目や綿のほかの着物を着るべからず。絹に似た木綿でもいけない。 これもさっき言うた話や。 だんじりは格好で曳くもんやない。 贅沢はしたらいかんと、こういうことや。 どうや解ってくれたかいな?」
清吉… 「なるほど、ようわかります。 さすが岡部さんや。 立派な殿さんになんなはった。 わしも嬉しい」
庄屋… 「あんたはそんなことで喜ばんでもよろしい。 それより自分のこと心配しなはれ」
清吉… 「ほたら庄屋さん、わては何をしたらええんでっか?」
庄屋… 「わしはこの書状を門の前に貼っておくから、お前さんはお前さんと同じように字の読めん連中に言うてあげて欲しいんじゃ」
清吉… 「偉い!」
庄屋… 「何やいな急に。 年寄りをびっくるさせたらアカンがな」
清吉… 「よー言うとくんなはった。 えー、わしに任して貰うたら村だけやなしに町も浜も皆に言うて回りますわ」
庄屋… 「いや、それは構やせんのや。浜は高井さんとこで、町は本町のなら屋さんがぜーんぶやってくれるんじゃ。 あんたは村を頼まれてくれたらそれでえーのや。 年番の留吉さんが帰ってきたらまたわしが頼みますでな。 そしたら留吉さんは三郷の寄合いで皆さんに言うてくれますやろ」
清吉… 「やっぱり庄屋さんは見る目があるわ。 よーわしに頼んでくれなはった! 大船に乗ったつもりで安心しとくなはれ。 これで、何時死んでも大丈夫や」
庄屋… 「なんでわしがこんなことで死ななあかんのじゃ。頼んだのがアンタ以外のお人やったらこないに心配もせんのやが、アンタだけにな…。 エライ人に声をかけた。 この書状と同じもんをここに書いてあげるから、今日のところは真直ぐ家へ帰んなはれ。 帰ったらな、アンタは字が読めんでも嫁さんは読み書きも達者なお人や。 これを持って帰ってな、今晩一晩かけて、あかなんだら二日かかっても三日かかってもよろしい。 ちゃんと覚えたら、アンタと同じように字の読めんお人に話してやってくれたらよろしいのや。 解りましたな。 真直ぐ帰んなはれや」
清吉… 「庄屋さんも心配し過ぎやで、ほんまに。 ”頼んだのがアンタだけに心配や” てなこと言いながら、わしを頼りにしてんのや。 堂々と ”アンタをおいて他にない” と言わんところが奥ゆかしい。 よっしゃ!早速に今晩から思うたけど、夜も更けてきた、考えたらわしも晩飯食うてない。 饅頭二つ食べただけや。 明日から村中回ったろ。 それに、こないな大事なこと庄屋さんに頼まれたんや言うて、カカびっくりさせたろ。 ・・・・ カカいてるか?今もどったで」
さき… 「アンタ えらい遅かったやないの。 だいぶ怒られましたんか?」
清吉… 「アホなこと言うたらアカン。なんでわしが怒られなあかんねん」
さき… 「お孫さんのヤイトは? 牛にうった針は? 何ともなかったんでっか?」
清吉… 「何でそんなこと知ってんのや?」
さき… 「わてはあんたの女房や。 何でも知ってます」
清吉… 「こらあ、うかつなことでけんな。 お前はE・H・エリックやな」
さき… 「それも言うならマリックでっしゃろ」
清吉… 「ほたらお前、饅頭も知ってるか?」
さき… 「また皿でも舐めましたんか」
清吉… 「そ〜 そ〜」
さき… 「他所さんのお家で止めとくれやす。 いつまでも子供みたいなことしてたらあきまへんで」
清吉… 「今日庄屋さんへ行ったのはビックリしなや。 実はかくかくしか じかこうこうたくわんや」
さき… 「えー! たくわんは解からんけどほんまでっかいな。 えらい大役ですがな。 その書状を見せとくなはれ。 ・・・・・ へー、これですかいな。 よーこんな大事なこと庄屋さんもあんたに頼みなはったな。気の毒に」
清吉… 「そら何をぬかすねん。 わしを差し置いて他に誰がおる。 その時の庄屋さんお前に見せたかった。 両手を前について、涙を流しながら “清吉さん。あんたを男と見込んでお願いします” と、深々と頭を下げた。 そこまで頼まれたらわしも男や ” よっしゃまかしなはれ” スッと立ち上がって家を出ようとしたその時や。 庄屋さんがわしの羽織の中に何ぞ入れた。 ズシッとしたその感触。 重さからして金子百両」
さき…

「アンタな、何時も言うてるように他所で言いなや。 アンタの話は はなから嘘てわかるんや。 袂のあるような着物もってまへんやろ。 アンタと一緒になって羽織着たのん見たことおまへんで。 だいいち羽織なんか持ってまへんやないの。 なにが百両やのん。 えー加減にしなはれ」

清吉… 「そんなことお前に言われんでも解ってる。 お前かて何ぞないと聞いてておもろないやろ」
さき…

「しょうもない話してんと早うご飯たべなはれ。 まだ何にも食べてまへんのやろ? 今日はアンタの好きなシャコ炊いてまっせ」

清吉…

「そうや、腹へってたんや。 昼から饅頭二個しか食べてへん。 腹が減っては戦がでけんちゅうやっちゃ。 そうかシャコか。 嬉しいやないか。 漬物はあるやろうな?」

さき… 「それもアンタの好きな沢庵用意してまっせ」
清吉… 「なにっ、沢庵? それはアカン。 漬物はベッタラ漬けにかぎる」
 
著作:Kenzo
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