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presented by 岸和田だんじり祭振興会 

   

■ きしわだ創作落語 ■
〜其の参〜

『岡部の殿さん』

 岸和田のお噺で暫くの間、お付き合いを願います。
 岸和田のお殿様といいますと、岡部さんが有名でございますが、岸和田初代藩主というと小出秀政。 豊臣秀吉の甥にあたります。 その関係で天守閣をつくったり、お城を整備いたしました。 二代目が小出吉政(ヨシマサ)、三代目が小出吉英(ヨシフサ)。 小出さんが岸和田でおったのがここ迄で、但馬出石城へ替わりはった。蕎麦の有名な処です。
  そのあと着いたのが、松平康重(ヤスシゲ゙)。 丹波篠山から来られました。 この人が四代目。五代目が松平康映(ヤステル)、松平さんはこの二人で播磨の山崎へ移ってしもうた。
  そうして岸和田藩主六代目が、皆さんよくご存知の岡部宣勝さんです。 岡部さんは元々は静岡県の出身やそうですな。 ほんまやどうか知りまへんで、私も見た訳やおまへんよってな。 静岡県に朝比奈川ちゅう川があって、上流に朝比奈城、中流にあったのが朝日山城。この朝日山城に住んでたのが岡部さんの先祖やそうです。 この岡部さんと朝比奈さん、仲が良かったんかどうか知りまへんが、何かあった時に急を知らせる意味で、ノロシを打ち上げた。それが今もこの地区に、静岡県の無形民族文化財として残ってるそうでございます。 朝比奈大龍勢いうてロケット花火の大きいもんやそうです。 花火の全長が10メートル、発射台の櫓が19メートル。普通の花火やったらドーンと打ち上がって、一番高いところで花開いて落ちてきますけど、朝比奈龍勢はここでまた点火するらしい。人工衛星の二段ロケットみたいです。 二回目に火の付いたその一つ一つが、パラシュートをつけて色とりどりに輝いてゆっくりと空を舞うちゅうんやから、一度は見てみたいもんですな。 10月に行われるらしいですけど、二年に一回やから行く時はよう調べてから行ってください。

 岸和田で玉谷先生いうて、昔の事を色々調べてる人がいたはります。 その玉谷先生が、江戸時代の住宅地図みたいなのを復刻したのを一寸見せてもらいましたら、お城の前に、朝比奈さんて大きなお家が書いてました。 今もありますけど、静岡の朝比奈さんと関係あるんでっしゃろか、これもまたどなたか調べてみてください。
  静岡の岡部さんが、なんで岸和田へ来たんかちゅうと、岡部宣勝のお父さん、岡部長盛。この人は、一昔前の言葉でいうと猛烈サラリーマンです。 十六歳で徳川家康に仕えた。 小牧・長久手の戦いで、榊原康政らと先鋒に加わって羽柴秀次の軍勢を打ち破って手柄をたてた後、各地を転戦。 これが連戦連勝。 徳川家康が、関東に移った天正十八年に、下総を預かって一万二千石。 そこで十九年おったんですが、その間に豊臣秀吉が亡くなって、関が原の合戦で徳川家康が実権を握った。 こうなりますと順風萬帆、只今巡回中。 なんのこっちゃ解りませんが、西国大名の見張り役として丹波亀山に移って、三万二千石。 六年亀山でおった後、丹波福知山へ替って五万石。 九年住んだ後、移ったのが美濃大垣です。ここで事件が起こった。そんな大層なもんやないんですがモーレツ社員が亡くなった。 亡くなった長盛も凄かったけど後を継いだ長男宣勝も偉かった。大体ようでけた親の息子は、やっぱりよう出来るか、阿呆かどっちかですな、誰とはいいませんが。 この宣勝、美濃大垣から播磨竜野へ替って五万三千石。 播磨竜野から摂津高槻。 摂津高槻からお待ちかね和泉岸和田へ着ました、これがなんと六万石。
 “えっ、岸和田は五万三千石とちゃうんでっか”って思いますやろ。違うんです、六万石なんですね。これが当時、和泉の国で採れるお米は、五万三千石で精一杯です。これを六万石いわれたら、お米を作ってるお百姓さんはたまったもんやない。寛永十七年七月のことでございます。
  “えらいこっちゃがな、何とかして貰わなわしら食べていかれへん。”
 百八ヶ村のえらいさんが、集まって相談します。
  “誰か代表で殿さんに掛おうて貰おう”
 今やったら何ちゅうことはないんですが、江戸時代です。 打ち首は覚悟せなあかん。 死ぬのが解ってて誰が行きますかいな。 ところが凄い人がおったんですな。 沼町の川崎さん。 欄干橋で殿さんに “ 恐れながら ” と直訴した。もちろん津田川で打ち首になったんですが、お百姓さんの願いが叶いました。 川崎さんも偉いが、殿さんも偉い。 弟に七千石分け与えて、五万三千石にしたという。ええ話ですな。
 この時処刑された庄屋の一人に土生十左衛門という方がおられました。今も土生にお墓があるそうでございます。犠牲になった庄屋さんの遺族にと、村の人が毎年二十石のお米を持って行ってたんですが、年が経つにつれそれが十石になり、十石が五石に五石が二石になった。家族が困って、何とかして欲しいと書いた文書が今も残っているそうでございます。
“ 喉もと過ぎれば暑さ忘れる ” 昔も今も人の心は変わらんもんですな。

子供… 「お父ちゃん、お父ちゃん。岸和田の殿さんは、昔から岡部さんか?」
父親… 「どないしたんや、急にそんな事聞いて。また何ぞ悪いことしたか」
子供… 「ボクが悪いことするような子にみえまっか? あんたと一緒にしたらあきまへん」
父親… 「そら何をぬかすねん! だいいち親をつかまえて ” アンタ ” ちゅう子供がどこにおる」
子供… 「ここにおる」
父親… 「どつくで!しまいに」
子供… 「どついてみなはれ、児童相談所に言うたるわ。 …エーンお父ちゃんにたたかれた。 今日で三日もご飯たべさせてもろてへん」
父親… 「阿呆か! お前みたいにブクブク太って誰もそんなこと信用するか」
子供… 「フフフッ、子供はな、一寸ぐらい太ってるほうが可愛いねん。
なっ、お父ちゃん。 しかしアンタみたいに稼ぎも無いのにブクブク太ったらボクも肩身が狭い」
父親…

「おい、かかぁ! そこの箒もって来い、そこにあるやろ。・・・・・こら、わしは箒をもって来い言うたんや。 これ、バットやないか。 しかも金属バットやないかいな。 お前ほんまにこの子の母親か? ・・・・・えっ、なに?・・・・・”父親はわからんけど母親は確か” どういうこっちゃ!」

子供… 「まぁまぁご両人、落ち着きなはれ、子供の前や。ボクのことで喧嘩したらあきまへん。 じつはなお父ちゃん、ほかでもないんやがボクもこの年まで岸和田で生まれ育って、あんまり岸和田のことは知らん。 “ 鉄は熱いうちに打て ” ちゅう諺もあるやろ。いましっかりしとかんと アンタみたいになるのが怖い」
父親… 「バット持ってこい!バットを!! ・・・・・何やこれ、鉄砲やないか。 何でこんなもんが家にあるんや? ・・・・・えっ、なに?・・・・・” いつも撃ちたい人が…傍におる” 恐ろしいやっちゃな、お前も。」
子供… 「お父ちゃんも気ィつけなあかんで。
しかしお父ちゃんは、だんじり好きやし、彫物も詳しいよって古い話もよう知ってるんやろ?」
父親… 「最初からそないに聞いてきたらええんや、変なこと言うよって横道それるんや。そうか、お前も十歳や。これはわしも悪かった。もう一寸早うから教えたら良かったな。そう言うたらわしもお爺ちゃんから教えて貰うたもんや。よっしゃ今日はゆっくり話したげよ。岸和田のお殿さんは、最初は岡部さんやない」
子供… 「ほな、僕のお爺ちゃんが殿さんやったんか?」
父親… 「なんでやねん! お爺ちゃんがうどん作ってたのん、お前覚えてるやろ。 どこぞの殿さんが出前するかいな」
子供… 「なるほど、それもそうですね」
父親… 「お前、その喋り方やめぇ! うちの家が殿さんの子孫やったら、もっと えー暮らししてるわ」
子供… 「僕も、アンタを親にはもってない」
父親… 「そら何をぬかすねん! まあえぇ、今日は何でも教えたるよって、聞いてみ」
子供… 「ならば尋ねるが」
父親… 「やめいちゅうてんねん、それを!」
子供… 「ほたらお父ちゃん、最初の殿さんは誰やねん?」
父親… 「よお聞いとけよ、ぼうず。 ここはお爺ちゃんに何べんも聞いたよってな。 岸和田は江戸時代のまだずーっと昔から殿さんがおって、有名になったんは安土桃山時代からや」
子供… 「それは江戸時代の前ですか、後ですか?」
父親…

「天正13年7月、言うから江戸時代の前やな。 西暦で言うたら1585年や。それまで岸和田を治めてた中村一氏(カズウジ)が、近江水口城へ替って、その後来たのが小出秀政や 。  なんでこの人が岸和田で有名か言うたら、岸和田城の天守閣を作ったんや。普通では天守閣は作らせて貰われへんのやけど小出いう人の奥さんは豊臣秀吉の大政所(おおまんどころ)の妹さんや」

子供… 「へえー、甘いもんが好きやったんやな」
父親… 「何や、その甘いもんちゅうのは?」
子供… 「今いうてましたやろ。 豊臣秀吉の妹は まんじゅう と トコロテン が好きやって」
父親… 「何を聞いてんねん! 大政所や。大政所いうたら秀吉のお母さんや。つまり親戚やから天守閣を作ったんや。禄高は三万石や」
子供… 「三万石、言うたら何です?」
父親… 「最近の人はあんまりお米を食べんようになったけど、その頃の一石いうたら一人が一年に食べるお米の量で、金一両が一石やった。 そやから小出の殿さんが来た頃の、岸和田では三万石のお米が採れたちゅうことかな。それをお百姓さんやら漁師さんらが払うてたんや。 今で言うたら、お父ちゃんが国に払うてる税金と一緒や」
子供… 「お父ちゃん、税金払うてまんのか? 稼ぎ悪いのに。そんな金あったら 小遣い上げて!」
父親… 「何でお前の小遣い上げなあかんねん。 子供には解らんけど、大人は何があっても税金は納めんとあかんのや」
子供… 「えーこと言うなぁ、市会議員になったらどないです?」
父親… 「黙って聞けっ! わしが市会議員になれる訳ないやろ!」
子供… 「解ってるよ、一寸した言葉のキャッチボールやがな。 本気にしたらアカン。 お母ちゃんに鉄砲で撃たれるで」
父親… 「それを言いな、今晩から寝られへんがな」
子供… 「ほたらお父ちゃん。 大きな台風が来て、お米が出来へんかったらどうすんねん」
父親… 「えー質問や。 台風が来ても、雨が降らんとお米が出けへんかっても、お殿さんには持って行かなあかん。 そやからお百姓さんは、自分らはお米を食べんとお殿さんに持って行ったんや。 それでもあかん時は、百姓一揆いうて、えらい事になったんや」
子供… 「あっ、それ知ってる。社会でなろたわ」
父親… 「お前も勉強してんやな」
子供… 「当り前や。 あんたと一緒にしたらあきまへん。 子供は親の背中を見て大きなる言うけど、私の場合はつらい」
父親… 「誰に似たんやろな、その喋り方は」
子供… 「あんたでない事は確か」
父親… 「ちょっと黙って聞けんか。 それで小出の殿さんが、元和五年いうから1619年に但馬の国、出石城へ替ったんや。 出石いうたら、この間おまえ連れて行ったやろ。蕎麦のおいしいとこや」
子供… 「覚えてるよ、そやけど蕎麦は食べさせて貰てません。 食べたのはお子様ランチやで。 その時付いてたおもちゃ、お父ちゃんに取られた。あれ返せっ!」
父親… 「しょうもない事、覚えてんなおまえは。 それからな・・・」
子供… 「ちょっと待って、お父ちゃん。 今日のアンタは、普段のお父ちゃんと思われへん。 友達呼んでくるわ。 皆こんな話好きやねん、ちょっと待っててや」
父親… 「こら! ・・・あっ、行てまいよった。 難儀なやっちゃな」


いうてるところへ仰山、友達を連れて帰ってきよった。

父親… 「うわー、仰山連れて来たな」
子供達… 「こんにちは、おっちゃん」
「こんにちは」
「おっちゃん、こんにちは」
「こんちわ」
「おっさん、来たったで」
父親… 「えらいガラの悪いのもおるな」
子供… 「みんな、さっき言うたようにな、今日はうちのお父ちゃん、えー話聞かしてくれんねん」
子供A… 「えー話て、夕べの事か? おっちゃん」
父親… 「誰や、おまえは? 隣の子やないかいな。 なんや夕べの事て」
子供A… 「言うてもよろしか、おっちゃん。 おっちゃん、うちとことは薄い壁一枚やで。 もうちょっと考えてもらわな子供の教育に悪い。 『ちょっとアンタ、何すんねんな、離しなはれ。冷たいやないの』 『えーやないか、久し振りやし』 」
父親… 「ちょっと待て、ちょっと待て。 おまえ、そんな事聞いとったんか? しゃーない子やな。今日はそんな話とちゃうねん」
子供B… 「おっちゃん、その話の方がおもしろそうや」
父親… 「やかましい。そんなもん子供の聞く話やない!」
子供B… 「そやけど、おっちゃん。おもろいもんはおもろいで、なぁみんな。 おい、さっきの話の続き聞かせてえな。 表行こか」
父親… 「わかった、わかった。 おっちゃんが悪かった。 頼むさかいここでおって」
子供B… 「目の前にお菓子でも、あったら私らおとなしゅう座ってますけど」
父親… 「悪い子やな、大人を脅迫しよんねん。 おい!お母ちゃん、お菓子持って来たって、お菓子を。 ・・・・・おまえの声が大きいよって、こないなんねん。気いつけなあかんがな、ほんまに。 何を赤い顔しとんねん。何を考えとんねん、おまえは。・・・・・えっ、なに? ” ほな今夜 ” ? 阿呆かお前は!
えーか、ほな話、続けるで。小出の殿さんが、出石城へ行ったその後に松平康成いう殿さんが、丹波篠山から来たんや。 ところがこの松平さんは20年おっただけで、播磨へ替ってしもた。 その後に来たのが、皆知ってる岡部の殿さんや。高槻から移って来たらしい。高槻いうても忠岡の高月ちゃうで、大阪・摂津の高槻や」
子供B… 「おっちゃん、岡部の殿さんて偉いんか?」
父親… 「うん、岸和田の自慢話や言うて、お爺ちゃんがよう教えてくれた話 聞かしたろか? 岸和田へ来たのは、岡部宣勝ていう殿さんやけど、このお父さんが岡部長盛いうて、徳川家康の家来やったらしい。天正十三年やからさっき言うた、小出秀政が岸和田に来たその年に、信州で真田いう人と徳川家康が戦争をしたんや。この戦争で一番活躍したのが、その時、まだ十八才やった岡部のお父さんで、褒美に槍をもろた。この槍を参勤交代の時はずっと持って行ったみたいやな。参勤交代て知ってるか?」
子供B… 「僕、知ってるで。 徳川家康いうたら将軍やねん。 殿さんの中で一番偉いひとや。 大名は一年交代で、江戸に住まんとあかんねん。 江戸で一年住んだら、その次の年は地元で一年暮らすんや。 そやから江戸にも屋敷があって、旅費も今と違うて何日もかかるから、仰山お金使うよって大変やったけど、そのお陰でえー道が一杯出来たんやで」
父親… 「そうや、普通は一年交代やけど江戸城に近い大名は二月と八月の半年交代や。遠いところは気の毒やよって三年に一回とか、六年に一回やな。 蝦夷の松前の殿さんは六年に一回や」
子供A… 「殿さんは籠やけど歩く人はしんどいなぁ。 何日くらいで江戸まで行く んでっか?」
父親… 「それは わしも知らん」
子供B… 「おっちゃん 岡部さんのことはよう知ってるけど、そういう知識はないんやな。 よっしゃ、ボク知ってるよって教えたるわ。 そこへ座ってあんまり美味しないけど饅頭でも食べとき。 おばちゃん お茶入れたってぇ。 ・・・・・わざわざ入れんでもそこのデガラシでえー」
父親… 「まずい饅頭でわるかったな。 ・・・・・お前もほんまにデガラシ持ってくることないやろ!」
子供B… 「その頃は今みたいなウォーキングシューズなんかあれへん。 草履(ぞうり)とか草鞋(わらじ)です。 岸和田の殿さんで十六泊十七日くらいやったらしいで。 そやから一日 30Km から 35Km 歩いたちゅうことですわ。 毎日マラソンやってるみたいなもんや」
父親… 「ふーん、なるほどな」
子供B… 「ついでに江戸の屋敷も教えたろか。 上屋敷・中屋敷・下屋敷てあるんや。 上屋敷いうたら殿さんの住む家や。 その周りを囲うようにして家来の家が長屋みたいにあったんや。 中屋敷いうたら殿さんの家族が住む家や。 下屋敷は殿さんの別荘や。 岡部さんの上屋敷のあったとこは今は日比谷高校になってるで。 な、おっちゃん。聞いてるか? ・・・・・おっちゃん寝てんちゃうやろな? 桃太郎の噺やないんやから寝たあかんがな」
父親… 「いや寝てへんけど えー気持ちやった。 こんど寝つけんとき呼ぶよって来てくれるか? ・・・しかしよう知ってるなぁ、おまえは」
子供B… 「夕べの続きしましょか?」
父親… 「それはえー、もう堪忍して。 ほなまた、岡部さんの続きしたろ。 その参勤交代で江戸に着いた大名の行列は、江戸城の二重橋で持ってる槍を捨ててからやないとお城に入られへんかったんやけど、岡部の殿さんだけは、槍を持ったまま二重橋を渡って、お城に入って行けたんや」
子供A… 「へえー、やっぱり岸和田の殿さんは偉いんやな」
父親… 「そうやなあ。それと岡部さんと徳川家康が親戚や、ちゅうのんは知ってるか?」
子供A… 「えー、ほんまか、おっちゃん?」
父親… 「これもお爺ちゃんが、言うとったことやけど、どうもほんまらしいな。 家康にはお姉さんがおったんやが、松平いう人と結婚して兄弟がおらんようになってもた。 それで寂しいから娘を他所から貰うたんや。 その大事にしてた娘が、岡部長盛の奥さんになったらしい。そやから岸和田へ来た岡部宣勝さんのお母さんは、家康の娘になるちゅうことやなあ。 それからこんな事もあるんやけど、一寸ややこしいかなあ?」
子供A… 「かめへん。もう充分ややこしなってるさかい。言うて」
父親… 「そうか、ほな言うけどな。 岡部長盛の子供も家康の養女になって、この子は九州の鍋島いう殿さんの奥さんになってしもうたんや」
子供A… 「えー! ほたら親子が姉妹になったちゅうことか?」
父親… 「そやから、ややこしゅうなる言うたやろ。 この頃は一杯こんなことがあったんや」
子供A… 「へー、おっちゃんよう知ってるなあ、さすが生き仏」
父親… 「誰が生き仏やねん! 勝手に人を殺しな。 それも言うなら生き字引や!」
子供A… 「ほたら、おっちゃん。 家康の娘さんのお墓は、岸和田にあるんか?」
父親… 「南町に梅渓寺ちゅう寺があるやろ。 あそこにお墓があるちゅうのは、誰かに聞いた事あるなあ。 紀州の殿さんが岸和田を通ったら、梅渓寺の前でカゴを止めて必ずお参りをしたらしい」
子供A… 「紀州の殿さんも徳川の親戚ですやろう?」
父親… 「そうや。 徳川家康は11人の男の子いてたんやけど、三番目が秀忠いうて徳川二代目の将軍や。 ほんで最後から2番目の子供、10番目が頼宣、この人が紀州の殿さんや」
子供A… 「しかし、おっちゃん。何でもよう知ってんなあ。 そんなに何でも知ってんのに、何で社長になられへんねん?」
父親… 「そんな事、おっちゃんの知ったこっちゃない。 さあ、おっちゃんの話は今日はこれで終わりや。 はよ帰り」
子供達…

「ほな、帰ろか。 おっちゃん、おおきに」
「おおきに、おっちゃん」
「また来るわ。さいなら」

 

子供A… 「しかし、あのおっちゃんがよう知ってたな。 人は見かけによらんちゅうけどほんまやな」
父親… 「なにお! 陰口は表出てから言え!」
子供A…

「あっ、びっくりした。 まだ家の中やったか」

 

子供…

「お父ちゃん、おおきに。 みんな喜んで帰っていったわ。 お父ちゃんのこと褒めとったで」

父親… 「そうか、こんな事やったら何時でも教えたる。 まだ他にも知ってる話があるよってな」
子供… 「僕も、鼻が高いわ。 なあ、おかあちゃん」
母親… 「ほんに、私も惚れ直したわ」
父親… 「近寄るな! お前に寄ってこられたら怖い。 ほな喋り疲れたし、ちょっと行てくるわ」
母親… 「どこ行きなはんねん?」
父親… 「ちょっと飲みに行ってくる」
母親… 「またでっかいな。 あんた一昨日もそんな事いうて午前様やったんやで! 4〜5日前もそうでしたやろ。 一日おきに午前様やないの。 どないなってまんねんな」
子供… 「お母ちゃん、しゃーないわ。 お父ちゃんも参勤交代や」
著作:Kenzo 
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