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presented by 岸和田だんじり祭振興会 

   

■ きしわだ創作落語 ■
〜其の五〜

『祭見物 〜曳き出し〜』

清吉… 「喜六、オハヨウ。起きてるか」
喜六… 「誰やいな、朝早うから」
清吉… 「誰ややあるかいな、わしや、清吉や」
喜六… 「清やんかいな。何やこんな朝早うから・・・・。
えー、まだ夜中の二時やないか。もうちょっと寝かしてんか。 昨日飲み過ぎて
さっき寝たとこやで」
清吉… 「またそんなこっちゃろと思てたんや。 さぁ、早う起きて」
喜六… 「何すんねんな、布団とったら寒いがな。どないしたんやな」
清吉… 「今日は、お前が見たい言うとった岸和田だんじり祭の曳き出しの日や。
早う行かんと見られへんで」
喜六… 「あー そうやったな、難儀やな。
清ヤン、悪いけどおりいってあんたに頼みたい事があるんやが」
清吉… 「何や、こんな時に」
喜六… 「曳き出しを明日にしてもろて」
清吉… 「アホかお前は、そんなこと頼めるかいな。
岸和田の祭は雨が降っても槍が降っても、9月の14日ちゅうのは替わらへんのや」
喜六… 「えー!、槍が降ったこともあるんかいな」
清吉… 「どつくで、しまいに。眠たい言うてるわりにしょうもないことは聞いてんのやな。
さっさと早う起きんかいな」
喜六… 「判ったがな、起きたらえーんやろ、起きたら。
やいやい言わんでも起きるがな、ちょっと待ちなはれ。顔ぐらい洗わしてぇな」
清吉… 「そらそうや。なんぼお前でも目やにのついた顔では、出かけられんやろ。
 ・・・・歯も磨いときや。 これから行くカンカン場ちゅうのは、身動きも出来んぐらいのすごい人らしいよって臭い息しとったら他の人に迷惑や。
・・・・おい、まだか」
喜六… 「いま、やってるがな」
清吉… 「早う行かなえー場所で見られへんのやで。
人に聞いた話ではカンカン場の周辺は、その年の祭が終ったら 来年の祭の場所取りの為に 地面に名前を書いてるちゅうやないか。 スプレーで字を書いたり、ガムテープを貼ったりで あんまり綺麗もんや無い。臨海線みたいに車のようけ通る道であんな真似ができるもんやで。
市役所の駐車場も大変らしい。 
後の掃除で大変やてガードマンのオッチャンも言うてた。駐車場はどうか知らんけど道路の上は危険や、それに道路交通法並びに道路法の違反や。こんな事言うてたらワシは警察官みたいやな、なァ喜六 
・・・・喜六、おい喜六。
何してんのや、顔洗うてるとおもてたら 米といでるやないか」
喜六… 「当り前や、今起きたとこや。朝飯はきちんと食べなあかんて死んだ殿さんの遺言や」
清吉… 「誰やいな、その殿さんちゅうのは」
喜六… 「知らんのかいな。殿さんちゅうたら岡部長泰(ながやす)や、だんじり言うたら岡部長泰や。 そのくらい勉強しとき」
清吉… 「わかってるがな、その殿さんがお前の先祖かいな」
喜六… 「誰が先祖て言うたんや。殿さんて言うただけや」
清吉… 「しょうもないこと言うてる場合やないやろ。
今頃からご飯たいて食うとったら曳き出しが終ってしまうで。お前知ってるやろ、横町のうどん屋の大将。
・・・・そうや、あの大将 おとといから布団持って泊り込みで場所取ってるみたいやで。 昨日着替えを取りに帰って来たときに聞いた話では そらすごい人らしいで。夜中じゅうドンチャン騒ぎで 近所迷惑や言うて 警察の人まで来て見張ってたちゅうことや。
それに今食べんでも向こうへ行ったら 店だしが一杯出てて 腹が減っても大丈夫や。タコ焼きも焼きそばもある、酒も心配せんでもえーんや」
喜六… 「イカ焼きもあるか?」
清吉… 「あるやろな」
喜六… 「関東煮は?」
清吉… 「あー、それで一杯飲むのはえーもんやな。 あるある」
喜六… 「マツタケのどびん蒸しは? 鯉のあらいは?」
清吉… 「あるかいな そんなもん。 
あったらどうすんのや、お前がワシに奢ってくれんのか?」
喜六… 「なんで一人もんのワテがおごらなあかんのや。
清ヤンみたいに嫁さんも子もあるカイショの有る人間が奢るもんや」
清吉… 「褒められてるような気せんけど。 まぁ何でもあるよって心配せんでもえェ」
喜六… 「ほたら金魚すくいとか、スマートボールは?」
清吉… 「お前カンカン場に何をしに行くんやいな。 おちょくってたらあかんで」
喜六… 「おおきに、おおきに。お蔭さんで目ぇさめてきた。 
よっしゃほたら朝飯は諦めるわ」
清吉… 「当り前や、ほな行こか」
喜六… 「ちょっと待って」
清吉… 「まだなんぞ あるんかいな。
何をしてんのや、手拭い持って何をするんや」
喜六… 「風呂 行てくるわ」
清吉… 「えー加減にせぇ」

 頭の二、三パツもはたいて 首根っこつかんだまま表へ出ます。
喜六… 「・・イタイ ・・・・イタイ。
何をすんねんな、猫やないねんで」
清吉… 「お前につきおうとったら みてみぃもう三時や」
喜六… 「まだ三時や。 真っ暗やがな、世間はみな寝てるで」
清吉… 「ゴチャゴチャ言うてんとサッサと歩け。 一人でよう歩かんのか」
喜六… 「アンタが首根っこをつかんだままや」
清吉… 「何や重たいと思うたらお前か、いつまでぶらさがってんのや」
喜六…

「アンタが離せんのやないかいな。
・・・・あー、しんど。死ぬかと思うたわ。
・・・そらそうと清ヤン こんなこと言うたら怒るか知らんけど言うてもええか」

清吉… 「何や、言うてみ」
喜六… 「ほんまに言うてええか」
清吉… 「怒れへんから言うてみ」
喜六… 「ほたら言うけどな。
 ・・・・アンタ足痛うないか」
清吉… 「何でや」
喜六… 「草履はいてへんで」
清吉… 「コラ! 何でもっと早う言わへんねん」
喜六… 「イタイがな。 怒れへんて言うたやないか」
清吉… 「当り前や! 難儀やな、いまさら戻られへん。 お前のせいや。
オイ、草履片一方脱げ!」
喜六… 「殺生なこと言ぃないな」
清吉… 「黙って脱いだらえーのや。 脱いだらこっちへ貸せ。
ほんまに腐った草履はいてからに」
喜六… 「偉そうに言うな、人の草履はいて」
清吉… 「何を!」
喜六… 「イタイがな。 何で草履貸して どつかれなあかんねんな」
清吉… 「文句を言わんと、黙って歩け! 
見てみぃ、人が足元指さして笑うてるやろ」
喜六… 「忘れたのは アンタやないか。
 ・・・・清ヤン、後から来るのは長屋の隠居ちゃいまっか」
清吉… 「ほんに そうや。 ご隠居はん、おはようさん」
隠居… 「おー、やっぱり そうかいな。 
後から見てたら賑やかな二人やと思うてたら、清吉さんに喜六さんか。 こんな朝早うから二人揃うて何処へ行きますのや」
清吉… 「へー、この喜六が曳き出しを見たいちゅうんで これからカンカン場へ行くとこですわ」
隠居… 「そら、楽しみなこっちゃ。 実はわしもそうですのや」
喜六… 「えっ、ほたらご隠居さんも 朝からご飯たいて 風呂行って そやけど草履はちゃんと履いてまんな」
清吉… 「お前は黙っとけ! 
そやけどご隠居はん、えらい人でお年寄は気ぃつけんと危ないでっせ」
隠居… 「体の事 気遣いしてもろうて有り難いこっちゃ。しかしなわしは観覧席のチケットを持ってますんでな 安心してますのや」
清吉… 「曳き出しのチケットをもってますんか。大変でしたやろ。よう手に入りましたな」
隠居… 「大変やったみたいですな。 知ってる人に頼んで、春木の長崎屋のピアへ 二日徹夜して 手に入れてもろうたんです」
清吉… 「そうでっか、そらよろしおましたな」
隠居… 「へー おおきに。 お二人さんはどないしはりますんや」
清吉… 「どこぞ すいてるところ捜して見よか 思うてます」
隠居… 「それやったら 早う行ったほうがよろしいで。 先程の使いの者の話では 見物人で一杯や言うてましたさかい、早う行きなはれ。 足元 怪我せんようにな」
清吉… 「そうでっか。 おおきに、ほたら先に行きますわ。
 ・・・・・・それ言わんこっちゃない、お前がぐずぐずしてるさかいや。 草履まできっちり見られてるやないか。走ろか」

 一生懸命に走った甲斐もありまして、カンカン場に やってまいりましたのが四時半。 まだ暗うございます。しかしながら周辺は人、人、人。 一時間以上もあるというのに りっすいの余地も無く人で埋まっております。
喜六… 「えらい人やな、清ヤン」
清吉… 「噂には聞いとったけど すごいもんやな」
喜六… 「清ヤン、なぁ清ヤン」
清吉… 「何や」
喜六… 「この人ら、朝飯食べたんやろか。 風呂はやっぱり入ってきたんやろうか」
清吉… 「知るかいな、そんなこと。ワシも走ってきてしんどいのや、暫く黙っててんか」
喜六… 「清ヤン、なぁ清ヤン」
清吉… 「何やねんな、うるさいやっちゃな」
喜六… 「わて、腹減って動かれへん」
清吉… 「動かんでえーがな、じっとしてたらえー」
喜六… 「そないなこと言いないな、わてタコ焼きが食いたい」
清吉… 「こんなとこで売ってへん」
喜六… 「あそこで売ってる」
清吉… 「皆と違う場所見てると思うてたら タコ焼き見とったんかいな」
喜六… 「さっきからタコ焼き屋のオッサンと目が会うてる」
清吉… 「知るかいな、そんなこと」
喜六… 「タコもわてを呼んでる」
清吉… 「タコが呼ぶかいな」
喜六… 「それが呼びまんねん、口八丁手八丁 言いまっしゃろ。
ほらタコが手招きしてる」
清吉… 「そんな口だけは達者やな。場所見とったるよって行ってこい。
・・・・・・何をしてんのや、早う行ってこい」
喜六… 「・・・・・・お金」
清吉… 「お前、金も持ってへんのかいな」
喜六… 「そうかて 清ヤンがせかすよって・・・・」
清吉… 「抜けてんのか しっかりしてんのかわからんな。・・・・これ持って行き」
喜六… 「おおきに、ほな一寸行ってきまっさ」
 
喜六… 「ハイ御免 ・・・・ハイ御免 そこ通してんか。 清ヤン食うてきたわ」
清吉… 「もう行てきたんかいな」
喜六… 「清ヤン、なぁ清ヤン」
清吉… 「何や、今度は」
喜六… 「おしっこ」
清吉… 「何で一緒に済ませてこんのや。・・・・我慢し」
喜六… 「我慢でけへん。 ここでしてもえーか。 ちょっと出たけど」
清吉… 「阿呆なこと言うたらあかんがな。早ういっといで」
観客A… 「賑やかなお連れはんやな。ハッピ着た人も増えてきましたけど まだ一時間ほどありますよって、どないです。何ぞ遊びでもしまへんか」
清吉… 「三十石舟やな、よろしな。 何やりまひょ」
観客A… 「せっかく岸和田へ来てますんや。 だんじりの謎掛けはどないです」
観客B… 「面白そうでんな。ホナわたいから お題あげまひょ。 
大工方と掛けましてちゅうのはどうです」
観客A… 「なるほど、屋根で踊ってます花形の大工方 戴きまひょ」
観客B… 「早いでんな、さすが言いだしっぺや。答えてもらいましょ。
大工方と掛けまして」
観客A… 大工方と掛けまして 内弁慶と解きます」
観客B… 「おっ、変わったところにきましたな。
内弁慶と解く。  さて、その心は」
観客A… 「その心は、うちわ(内輪)で元気に飛んでます、ちゅうのはどうです」
観客B… 「なるほど、いきなり綺麗にきましたな」
観客A…

「今度は私からお題 あげまひょ。(かね)と掛けまして」

観客B… 「おっ、チキチンときましたな。 鳴り物は鉦ではじまる言いまんな。 戴きまひょ。
 とかけまして虫歯と解きましょ」
観客A… 「虫歯とはどういうことでっしゃろか、その心は」
観客B… 「その心は、鹿(歯科)に世話になってます」
観客A… 「さて、虫歯が歯科 歯医者に世話になるのは わかるけど だんじりの鉦は何でシカですのや」
観客B… 「鉦をたたいてるのは 鹿の角ですわ」
観客A… 「なるほど これはえーこと聞きました。勉強になりますな。
 次、誰ぞ お題くれなはるか」
観客C… 「面白そうなな、私も寄せてもらいま。
カンカン場ちゅうお題はどうです」
観客B… 「ズバリそのものやな、これは難しい」
観客A… 「私が戴きましょう。 
カンカン場と掛けまして 若い女性と解きます」
観客B… 若い女性とはおどろきですな。 
そのこころは」
観客A… 重さが気にかかります。 と、どうです」
観客B… 「若い女性はわかりますけど、カンカン場とどんなつながりがありますんやろ」
観客A… 「ここら一体は昔から港でしたんや。船で運んできた荷物を測る場所のことをカンカン場、それが今も残ってますのやな」
観客B… 「そんな 謂われがありましたんか、 えーこと聞かせてもらいました」
喜六… 「チョット、ちょっと わても仲間に入れてんか」
清吉… 「やめとき、お前には無理や」
喜六… 「何言うてんねん、清ヤン。清ヤンには無理やけどボクにおうた遊びや」
清吉… 「何がボクや。墨汁みたいな顔して。 ほんまに出きんのか」
喜六… カンカン場と掛けまして、通勤電車と解きます。と、どうや」
観客A… 「先程の賑やかなお人が、通勤電車ときましたで。
ハイその心は」
喜六… トイレが無い、と どうや」
清吉… 「あるがなトイレ、岸和田の人に怒られるで」
喜六… 「ここに無い」
清吉… 「いつも傍にあるかいな。そう言うたらさっき おしっこ言うてたやないか。 便所に行ったようや無かったが」
喜六… 「大丈夫や、まかしなはれ」
清吉… 「まかせてどないすんねんな。ちょっと出た言うてたやないか」
喜六… 「ちょっとづつやったらわからへん」
清吉… 「さっきからお前 ウロウロしてたのはそれかいな、あかんがな、そんなことしたら」
喜六… 「かまへん、今年は阪神も優勝や。 わてもお題 出しまっせ。
 だんじりちゅうお題はどうです」
観客A… 「私がいただきましょう。
 だんじりと掛けまして 舞台とときましょう」
観客B… 「舞台ときましたな。
・・・・その心は」
観客A… 「その心は上下(かみしも)があります。とどうです」
観客B… 「はて、舞台のかみしもは解かりますけど だんじりのかみしもちゅうのは何です?」
観客A… 「だんじりには 上(かみ)だんじりと 下(しも)だんじりちゅうのがありますのや」
観客B… 「なるほど、ほんまえー勉強になりますな。
つぎ、他に誰ぞお題おまへんか」
清吉… 「わしが出しまひょ。地下足袋と掛けまして」
観客B… 「今度は私がもらいましょ。と解きます」
清吉… 「枕ときましたか、その心は」
観客B… 空気の入ったのもあります
清吉… 「あー、なるほど。最近はえーもんが出来てますな」
喜六… ・「わても貰いますわ」
清吉… 「また、お前かいな。やめとき。 しょうもないこと言いなや」
喜六… 「まかせといて、靴下と解きます」
清吉… 「地下足袋も靴下もよう似たもんやが、 その心は」
喜六… 五本指もあります
清吉… 「あるか! そんなもん」
喜六… 「あったら おもろい」
清吉… 「誰が買うねん、履きにくいやろ。 五本指の靴下に、五本指の地下足袋を履いたのん 想像してみいな。
・・・・あっ、えーかもな」
観客A… 「あんたまで おんなじこと言うてたらあきまへんがな。
 ・・・・それより見てみなはれ。真っ暗やったのに えらい明るなってきましたで」
清吉… 「ほんに明るなってきましたな。観覧席も満員になってまっせ。 前も見えんようになりましたな」
喜六… 「えらい背の高い人が仰山増えましたな。3メーターも4メーターもありまっせ。 もし、背の高い人は後ろへ下がっとくなはれ!」
清吉… 「そんな背の高い人がおるかいな。 あれは皆 脚立に乗ってんのや」

 岸和田祭はカンカン場だけや無しに、脚立を持った人が大勢いたはります。建築現場で職人さんが持ってんのはわかりますけど、若い女性が首にタオルを引っ掛けて脚立を持ってるちゅうのはあんまり見られたもんやおまへん。
 他の人の迷惑にもなりますし、怪我してもつまりまへん。 祭見物での脚立は絶対にやめとくなはれ。

 そうこうしてる内に六時のサイレンが鳴りますと 各町のダンジリが一斉に走りだします。 ここカンカン場でも一番近い大北町のダンジリがやってまいります。

喜六… 「清ヤン、ダンジリが来たんちゃうか。太鼓の音が大きなってきたし、掛け声も聞こえてきたで」
清吉… 「ほんに、纏(まとい)が見えてきた。 瓢箪の纏や、大北町やな」
喜六… 「纏は見えたけど あと何にも見えへんで。 ソーリャ、ソーリャ て、威勢のえー掛け声しか聞こえへんがな」
清吉… 「こんだけ脚立が前にあったら しょうがないやろ。 我慢しい」
喜六… 「そうかて あんな朝早うから起きて、風呂も入らんと来たのに殺生やで。 えーいヤケクソや、しゃがんでしまえ」
清吉… 「何をしてんのや、ダンジリが行ってしもうたで。 立ってたら屋根がみえたのに しゃがんだら何にも見えんやろ」
喜六… 「いいや、ダンジリのコマが見えた」
清吉… 「纏とコマだけやないかいな」
喜六… 「これでえーねん、瓢箪からコマや」
 
著作:Kenzo 
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